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彼は、貴族としての肩書と娼館経営の財力もあり、容姿にも恵まれていた。
外では、一見、社交的でそつなく振る舞うが、本当の彼は陽気ではない、
日陰を好む、そして人嫌い。
隠遁者の生活を好んだ。
それにふさわしく、
グロスターの館は昔の繁栄の面影が薄れ、廃墟のようなたたずまいになっていた。
館を維持するには、最低限の使用人が必要なのだが、リチャードは他人を入れるのを嫌った。
数人の小作人が、時折、掃除や庭の手入れに呼び出される・・・・
「旦那様、申訳ありませんが・・・」
純朴な小作人が、屋敷への立ち入りを、丁寧に断るようになった。
たぶん、最近赴任した教会の聖職者が
「グロスターの館では毎夜、悪魔が饗宴を開いている」
とでも説教したのだろう。
うっそうとした森に囲まれた館は、不気味にも見える。
しかし、幽霊屋敷でも掃除、洗濯、食事、身の回りの雑用をこなす使用人は必要だ。
実際、リチャードは困ってはいた。
身の回りの雑用に時間を取られると、小説を執筆する時間がない。
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