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温かくなったばかりの季節。わたくしはいつもの庭に出て、お花の観察とお茶を楽しんでおりました。
そこへ、お友達のフィリーネが興奮した様子で飛び込んで来たのです。
わたくしは思わずシュタープを取り出しました。
シュタープは、貴族が武器として使うためのもので、紋章入りの短剣のような形をしています。魔力を登録した貴族しか使えません。普段は折りたたまれていて、必要な時だけ展開できるようになっているのです。
わたくし達領主候補生が貴族院へと行く前に登録させられた指輪と対になっていて、シュタープさえ持っていればこの二つを身につけている者しか使えないそうです。
貴族院に行く時、指輪は親が管理し、シュタープは自分の物を使うように決められました。……普段はシュタープを使わないので、慣れるまではちょっと不思議な感じだったのですけれど。
シュタープを出したわたくしにフィリーネは少し怯んだ様子を見せましたが、すぐに気を取り直してわたくしの側近であるにシャルロッテに紙片を押し付けるように渡しました。そして身を翻します。
側近に渡された紙片にはオルドナンツ用の白い鳥がいました。
シャルロッテはすぐさまオルドナンツを飛ばすと、近くにいた護衛にフィリーネを追うように命令しました。
オルドナンツが白い鳥から黄色の小鳥へと姿を変え、二人の後を追っていきました。
……何事でしょう? 呆然と見送ってしまいましたが、何があったのか確かめなくてはなりません。わたくしは後を追おうとしました。
しかし、それはシャルロッテによって止められました。
彼女は側近達を集めて何やら話をしています。
シャルロッテの側近である側仕え見習いのリアディナがわたくしのところへ来て、お茶を淹れてくださいました。
わたくしは勧められるままにお茶を飲みながら、側近達の様子を見守ります。
実は、このフィリーネとわたくしは因縁の相手でお友達とはとても呼べる中ではありませんでした。
お父様同士でどうしても仲良くしてほしいという思惑があり、我慢のようなクラスメイトとしての付き合いをしていただけなのです。
よく模擬試合と云ってはわたくしを決闘に誘うようなヤカラですかね…。今回、良からぬことでも企んで周囲にバレたのでは?と思います。
でも、内容はよく聞こえませんが、何やらもっと深刻そうです。
……何が起こっているのでしょう? わたくしが不安に思っているうちに、シャルロッテ達の話は終わっていたようです。
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