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週番の仕事は気をつけて
「姫が亘一を好きとかおかしいから」
体育後の男子更衣室で大崎は納得がいかずにつぶやいた。特にイチャついてるわけではないから、佐藤亘一と蔵瀬亜理子がつきあっているのはあまり知られてはいない。だが、暗黙に存在する『姫そのまま保存会』(要するに姫に彼氏を作らせない会)には異変が伝わったのだ。
その一、姫と亘一の距離が近い時がある
その二、姫がバレーの試合をまた見にきた
その三、亘一の機嫌が良すぎて気味が悪い
その四、部活が無い日に自習室で近くに座っていた
「気のせいだろ、全部。その一は亘一が勝手に近いだけ。二はマネージャーと姫が仲良いから。三は亘一が変なだけ。四はそこしか席が空いてないからだ。」
大崎は論破してやったとふんぞりかえった。ちなみに亘一は、体育教官室に週番の仕事で呼ばれたため、まだいない。
着替え終わった相井がそんな大崎の肩にぽんと手をおくと諦めろと言わんばかりに首を横に振った。
「いいのかよ。相井はそれで」
と大崎が言うと、
「姫が幸せならいい。が、泣かしたら、例え亘一だろうと許しはしない。し、亘一ならなかなか手は出さないし、守るだろうから逆に安全だ。保存会の会長が亘一だと思えば良い」
男子更衣室の面々は静かにうなづいた。
廊下からバタバタと走ってくる音がしてそれと会話が漏れてきて皆、耳を澄ませた。
「佐藤さん、今から着替えですか?」
姫の声だ。
「体育教官室に寄ってたから」
「あのっ、今日一緒に勉強できます?」
「あ、テスト前部活なし日だ!亜理子は何時まで大丈夫?駅まで送るよ。」
急に男子更衣室のドアが開き中から次々とクラスの男子達が出てきて、体操服のまま亘一は大崎に首に腕を回され後ろ向きで教室へと引きづられていく。
「待って、俺まだ着替えてない。時間ない」
「お前はそのまま授業を受けろ」
「いや、先生に怒られるし、汗くさいかもだし」
亘一がじたばたとしながら反論する。
「怒られろ、臭いまま嫌われろ」
「すすんでんじゃないか!いつから名前呼びだよ!」
「たまたま席近かっただけじゃねーのかよ。」
「帰り送るとか!下校デートじゃねーか!姫を守るには必要か?いや、後ろから保護で充分だ!隣歩くんじゃねーぞ!」
口々に男子達に封じられキレられながら亘一は運ばれて行った。予鈴が鳴り男子の集団を避けてフリーズしていた姫も慌てて教室へと向かうのであった。
本編終わり番外編に続く
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