MESSAGE.2  体育祭

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 昼休み。やる事も無く、横でスマートフォンを触る佐久真と、後ろで一緒に昼を食べる咲綾と談笑するのが常になってきた。  「え、羽森くん、50m走の記録……5秒台なの?」  「まぁ5秒台つっても、5.9秒だけどな。」  ザワッと周りから声が上がる。充分すぎるタイムだ。咲綾も同じことを思っているのか、めちゃくちゃ足速いじゃん、と呟いている。  「陸上でもやってた?」  「いや? 俺ずっと帰宅部だった。ピアノとか色々文化系の習い事はちまちまやってたけど、特に運動系やってねぇよ。やってたのは水泳ぐらい。」  化け物じゃん、と言いそうになるのを堪える。天性の才がある人はこの世に多くいるだろうが、佐久真もその部類に入るらしい。  今年のリレー貰ったな、と笑う男子達に、んなことねぇっつーの、と笑い返す佐久真が、不思議と輝いて見える。  ぼんやりと見つめていると、咲綾が腕をつついてくる。  「ねぇ明日香、あんた絶対羽森くんのこと気になってるでしょ。」  「は!?」  小さな声で問うてきた咲綾を見てから、慌てて小さな声で返す。  「何言ってんの! そんなわけないじゃん、どう見てもヤンキーやってましたって感じの人だし!」  「でもあんたの目、恋する乙女の目だよ。」  「何それ……。」  気にならないと言えば嘘になる。自分が唯一持つ、血の繋がった兄の情報は下の名前だけ。その名前と同じ響きを持つ人だから。  確かにカッコいいし、口調はくだけているけど何かとこっちを気にしてくれるし、いい人なのは間違いないけど……この感情は恋なのだろうか。  (分かんないなぁ……。)  咲綾のニヤつき顔を指でつつきつつ、また佐久真の方へ視線を向けてしまう自分がいた。
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