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次の日、応援団の入団希望者が呼び出される。放課後になるが早いか、視聴覚室へ咲綾と向かった。
「わ、凄い人。」
咲綾の声に頷く。
大抵が2年生と3年生の集まりとは言えど、やはり前年、1年生として初めての体育祭に参加して、応援団のカッコ良さにやられた人が多いのだろう。
「2年生は部屋の中心から奥のスペースに座ってください!」
生徒会の体育祭担当の生徒が声を張り上げている。並べられた椅子に座ると、空いていた隣に誰かが座ってきた。
「よ、明日香と湯村じゃん。」
「羽森くん!? え、何……応援団、やるの?」
「そう……ってか、やるつもり無かったら、この集まり来てねぇっての。」
それもそうか、と納得していると、妙に視線が痛い。咲綾の方を見れば、押し隠してはいるが、居心地の悪そうな顔をしている。
辺りに視線を巡らせて、初めて佐久真に視線が集中している事が分かった。よく聞けば、カッコいいとか、モデルかな、とか、そんな声が聞こえてくる。
(目立つんだなぁ……。)
そう思いつつも、じっと考える。
なんだろう、この感覚を私はどこかで味わったことがある気がする。咲綾は視線の多さに戸惑っているだけで、特に気にしている部分は無いらしい。
つまり、この感覚に覚えがあるのは自分だけ。いや、正確には……この佐久真のように、視線を集める人を第三者として見ていた記憶というか、そんな感覚が蘇ってくる。
(私、羽森くんとどこかで会ったことあるのかな……?)
あの距離の近さは佐久真の性格もあるだろうが、それにしては最初からフレンドリーすぎる。でも、それが嫌だと感じない。
咲綾には「気になってる」という表現を使われたが、何か違う気がする。
(なんだろう……?)
妙に安心するような、温かいような、そう、まるで——
(お兄ちゃん、みたいな感じなんだよなぁ……。)
年齢的に、兄の「サクマ」であるはずないのに……何故かそう思ってしまう自分がいて、不思議だった。
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