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体育祭前日。いつも通り部活に咲綾と向かった。
「ね、今回の応援団、優勝間違い無しじゃない?」
「分かる。というか……A組の団長が演劇部の元部長で、副団長がダンス部の元部長っていうのが、単純に強すぎる気がする……。」
確かに、と笑う咲綾。そう、自分達A組は今回、大当たりを何人か引いていた。
団長と副団長は今話した通り、邦楽部という和太鼓や笛、琴など、日本の楽器を扱う部活の元部長や、運動神経抜群と有名な先輩もA組に集結するという豪華さ。
もちろんダンス部のレギュラーである自分達がいることもそうだが、チアリーディング部の人もいて、かなりしっかりとした発表内容になっている。
そこに来て、佐久真の存在だ。いわゆる「イケメン転校生」そのものである佐久真は、一瞬で先輩達にロックオンされていた。
『何で俺、センターに立つことになってんの?』
そうぼやいていた佐久真に、思わず笑って「頑張れ」と言ってしまったのは記憶に新しい。
佐久真は文字通り何でも出来た。バク転をしてみて、と言われればするし、踊りもすぐに覚える。声も通るし、動きもきびきびとしていてカッコいい。
ストレッチをしつつ、ぼんやりと考えた。
(体育祭か……。)
行事は、とある面から苦手だった。その面は何度か純粋な疑問として問われてしまい、そのたびに咲綾の前で静かに泣いてきた。
また今年も、両親が見に来る。顔の似ていない両親が来た時、佐久真に何を言われるだろう。
父親が長谷颯也だとは知っているはず。だけど、いざ横に並ぶと一瞬で本当に親子なのかと思うほど似ていないことが分かるのだ。
(嫌だなぁ……。)
佐久真にだけは、変な目で見てほしくない。そんな思いが溢れ、思わず溜め息を吐いていた。
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