MESSAGE.1  転校生

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 「で、ゴールデンウイークも終わって、私達に春が来ることは無いまま、どんどん暑くなって……待っているのは……」  教室に入り、席に着くや、後ろの席にいる咲綾が死んだ目で見つめるスケジュール帳には、中間テストの日付が書かれている。  明日か明後日ぐらいからちょうど、テスト週間と呼ばれる、部活禁止の一週間が始まるだろう。  「赤点じゃなければいい! ってテンション上げてた咲綾なら、大丈夫だって。」  そう言うと、咲綾の目が気怠そうにこちらを捉える。  「そりゃ明日香はさ……学級委員長やってて、成績優秀で、ダンスも上手くて、可愛くて、それはそれは素晴らしい文武両道型の優等生でしょ……ダンスしか取り柄の無い、平凡代表の私には無理……。」  何言ってんの、と言いつつ、一緒に笑う。  咲綾とは、幼稚園からの腐れ縁。ずっとクラスが分かれたことの無い伝説持ちの二人、と言われてきた。  自分の過去を唯一理解してくれていて、誰よりも傍にいてくれた、大切な親友だ。  「あ、そういえばさ、そろそろ来そうじゃない?」  「へ? 誰が?」  咲綾がニッと笑って、机に肘をついた。  「転校生。この地域、ほんとに出入り激しいし、もしかしたらあるかもよ。」  「……男子だったら、猛烈アピールしましょとか言うんでしょ。」  「あらぁ!バレちゃった! やだわぁ、明日香さん何で分かっちゃうのかしらねぇ?」  溜め息を吐きながらも、咲綾と笑い合う。  長谷(はせ)という名字の自分と、湯村(ゆむら)という名字の咲綾は、ちょうど出席番号の都合で、最初の席が隣同士になりやすかった。  長湯(ながゆ)ペア、というなかなか不憫な渾名をつけられてはいるが、先生達の間でも、この仲の良さは有名らしい。  (転校生か……。)  咲綾のこういう勘は、意外と当たりやすい。少し楽しみだった。
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