MESSAGE.1  転校生

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 先生が入ってきた瞬間、思わず後ろにいる咲綾を振り返ってしまう。ほら言ったじゃん、と言わんばかりの顔に、何度も頷いた。  先生の後ろには、一人、男子生徒がいた。  「おはよう、転校生を紹介するぞ。ほら、自己紹介して。」  男子生徒はしばらく教室を見渡していたが、やがて気怠そうに声を出した。  「羽森(はねもり)佐久真(さくま)。よろしく。」  短い挨拶の後、軽く会釈する佐久真という生徒。  所々に跳ねている焦げ茶色の髪、少しだけ切れ長の大きな目、通った鼻筋、引き結ばれた口、ここに色白とくれば……やはり、女子の目は既にハートマークだらけになっている。  「それじゃあ……長谷の隣が空いているな。あそこに座れ。横にいる長谷は、このクラスの学級委員長だ。長谷、あとで学内を案内してやってくれ。」  「あ、分かりました。」  荷物を置き、音を立てて座った佐久真が、不意にこちらを見る。何も言えずに見つめ返すと、その口角がわずかに上がった。  「名前、なんて言うの。」  「え、あ、長谷明日香です。よろしくお願いします。」  ふっと息が漏れた音が聞こえた。  「なんで敬語なんだよ、同級生だろ。ま、よろしくな。」  会釈で返すと、先生の話を聞く。連絡事項とプリント配布が終わると、一限の準備だ。今日は最初から数学がある。  教科書を出し、ノートを見ながら予習を軽くしていると、肩をつつかれた。  顔を上げると、横から手が伸びている。目を向ければ、佐久真がこちらに腕を伸ばしていた。  「昨日こっち来たばっかでさ、まだ教科書ねぇんだ。見せて。」  頷き、机をくっつける。教科書を見せてやると、佐久真が眉を上げた。  「ここ、前の学校でやってねぇわ。」  「え、ほんと? じゃあ、先生に当てられた時は答え教えるね。」  「マジ? サンキュ。」  ニッと笑う佐久真の笑顔に、不覚にもドキッと胸が高鳴った。
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