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私は、知らなかった。羽森佐久真という転校生の「本当の姿」を。
急に転校してきた理由、私に馴れ馴れしく話しかけた理由——全てはこの時から始まっていた。
「周りとの違い」は、思った以上に私を苦しめていた。
何度言い聞かせても、一人で泣いても、咲綾に話しても、何をしても変わらないままだった。
自分で抑え付けることで、全てをどうにかしようとしていたのかもしれない。見て見ぬふりをしたかったのかもしれない。
でも、それは私の知らない所で、少しずつ心を蝕んでいた。笑顔の仮面で覆い隠したSOSは、誰にも気が付かれなかった。
私が、頑張ればいい。前向いて、笑顔でいればいい。
ただ、それだけを思って生きてきた。それが私だった。
だから……佐久真が、全てを変えてくれるなど、この時は思っていなかったんだ。
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