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ようこそ王道へ
・・・・・
『これから新入生歓迎会を執り行う。風紀から説明があると思うが、くれぐれも問題を起こしてくれるなよ』
そう端的に、生徒会代表挨拶を終え壇上を後にする一ノ瀬先輩を数秒目で追う。
そして以前より幾分か顔色の良くなった彼に俺はほっと息を吐いた。
あれから時が経ち、今日は待ちに待った新入生歓迎会。
略して新歓の開催日である。
あの会長との出来事の後、1限終了と共に教室へ向かえば結城に遅刻常習犯扱いされた挙句、長谷川先生には不良生徒と呼ばれ散々だった。
まさかサボりとバレていたとは。
誰一人として体調不良を疑わなかったことに、俺信用されてなく無い?と若干凹んだし。
まあ、そんなこんなでこの数日間はいつも通り平和だった。
強いて変わった事があるとすれば、明楽と一色がクラスに顔を出すようになった事くらいか。
仕事が順調に進んでるから、と言っていたが、俺としては楽しいから来てくれるに越したことは無い。
そう思いつつ、隣で話を聞く山田に目を向ける。
列の順番は背の高さ順なので、身長が同じくらいの山田とは席と同様、隣になっている。
まあ、俺の方が1cm小さいわけだが。
「来年は越してるな」
「は?なにが」
「身長。俺今伸び盛りだから」
「や、俺もそうだし。てか来年は5cmくらい差できてんよ?」
「それは俺が許さん」
などと、軽く言葉を交わしていればふと聞き覚えのある声に反射的に壇上を見る。
そこには、マイクを片手に壇に上がる風紀委員長の姿があった。
綺麗な青がかった髪が一歩踏み出すたびにサラサラと揺れ、それと同時に何処からか恍惚とした溜め息が聞こえてくる。
この溜め息は、会長の時も同様。
『静粛に。今からルール説明を行う』
その一言で、周りは水を打ったように物音ひとつ立てずに静まり返り、俺は初めて見るその光景に目を瞬く。
確かに顔は他と比べ物にならないくらい格好良いが、ここまで影響力があるとは知らなかったな。
そこから新庄先輩の説明は続き、無事、説明を終えた先輩は壇から降りて行く。
その瞬間、また騒がしくなる会場に団結力が凄いと感心。
では、ここで本題、『鬼ごっこ』のルールを簡単に説明しよう。
ルールは通常と同じように、「鬼」が「人間」を捕まえ、そして捕まった「人間」はその場で即退場。
と言う簡易的なもの。
時間制限は3時間で、レクレーションとしてはとても長いものになる。
また、今俺たちの腕には学園支給の腕時計が装着されており、俺の腕時計は一定的に緑に点滅していた。
隣の山田の物を覗けば、それは俺とは違い赤色に点滅している。
まあ、勘のいい方はお分かりだろう。
これが「鬼」と「人間」のチーム分けになる。
赤が「鬼」
緑が「人間」
つまり俺が「人間」で、山田が「鬼」となる。
俺としては、そこまで熱意もないし寧ろサボりたい。
それにより、山田に早期に捕まえて貰おうと口を開けば、見計らったように、同時に会場にマイク音声が響く。
『ちなみにぃ、ちゃんと景品もあるよぉ〜!上位の人達には何と食券5万円分が与えられまぁ〜す!!』
この、間伸びした声は一色のもの。
最近よく耳にする声ですぐに誰か認識できたが、それとは別に、俺は動きを止めた。
食券5万円分。
その言葉は誘惑的に、魅惑的に俺の耳へと侵入してきたのだ。
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