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エピローグ~永遠のはじまり~
永遠は橋の欄干から身を乗り出して、いまかいまかと花火の打ち上げを待っている。
「楽しみだね、久しぶりの花火」
「ああ、ほんとに久しぶり。すごく懐かしいよ」
その隣には新羅の姿がある。新羅の胸の高鳴りは、永らく失っていた生身の拍動そのものだ。
「でも驚いたなあ、新羅君がこんなに積極的だなんて思わなかったよ」
永遠は恥ずかしそうに顔を赤らめ、視線を自分の右手に落とす。
その手は、新羅の左手としっかり結ばれている。
「だってさ、後悔はしたくないから」
「私も。だから、親に怒られたけど無理やり来ちゃったんだ」
永遠は可愛らしく口元を皿の形にした。
どーん。
唐突に花火が打ち上げられる。大輪の花が夜空に咲き誇った。
「わぁ、きれーい! すごーい!」
沸き起こる歓声と、拍手の音。永遠も感激の表情を見せた。その綺麗な笑みに新羅は目がくらみ、花火の光すら霞んでしまう。幸せだった。
だが、新羅は知っている。人間の栄華は、もうすぐ壊されることを。
終焉の幕開けとなる、この夏の夜に。
【了】
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