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恵梨香はまだ屋上にいた。
見上げると、晴れた青い空。
思えば、英昭に化けた英斗と再会したときもこんな空だった気がした。
恵梨香は空に向かって手を合わせ、静かに目を瞑った。そして、自分の内側に意識を集中させた。
しばらくして、満足した恵梨香はゆっくりと目を開けた。
「お祈りですか?」
同時に刑事の声が隣で聞こえてきたので、恵梨香は優しく首を振った。
「いいえ……誓いを立てたんです。ひとりの大人代表として」
そう言って、恵梨香はふたたび空を見上げた。
「たとえこの先何が起きようとも、それが不幸になる選択だったとしても……私は子どもの正義でありたい……そう誓ったんです」
恵梨香の視線の先を見ると、カラッと晴れた青空がどこまでも続いている。
刑事は静かに手を合わせた。そして、恵梨香と同じ誓いを胸の中で何度も唱えていた。
【完】
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