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『それでは、ニュースを続けます。昨日十一時頃、◯◯区にある△△山の中腹で人骨が発見された事件で、今朝新たに右脚の一部と思われる骨が見つかりました。見つかった人骨は二十代から四十代の男性のものであると推定されていますが、いまだ身元の特定には至っていません。警察は殺人事件の可能性も視野に入れ……』
「お母さんー!!」
娘の夢香の声を聞き、恵梨香は我に返った。
「ゆめか、今日はうさちゃんの靴下がいい!」
夢香はカエルの靴下をぶんぶん振り回しながら、母親に飛びついてきた。恵梨香はやれやれと、幼い我が子の目線まで屈み込む。
「夢香……今日はカエルさんで我慢して?」
しかし、我が子は頑なだった。
「えぇ~いやだ! うさちゃんがいい!!」
夢香は持っていたカエルの靴下を乱暴に床へ放り投げ、小さな頬を膨らませた。
──まったく、誰に似たんだか。
恵梨香は頭を掻いたが、そのとき彼女の視界に壁時計が入った。
七時十五分。それを見て、恵梨香が焦ったのは言うまでもない。
「うわっ、やばっ……夢香! はやく靴下履いて!」
「うさちゃんは?」
「洗濯してるし無理! ほらほら、早く保育園行くよ!」
渋る娘を玄関に促しながら、恵梨香は大慌てで玄関のドアを開けた。
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