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「ねぇねぇ、今日の服も派手じゃない?」  そのとき、ねっとりとした聞き覚えのある声が、恵梨香を捉えた。  恵梨香の今日の服装は、胸元や背中が大きく空いた青のショルダートップス、黒のショートパンツに豹柄のピンヒールだった。服装の指摘はいつものことなので、恵梨香は息を整えながらその声を聞き流していた。 「たしかに派手だけど……恵梨香ちゃんらしくていいんじゃない?」 「うん。ほら、恵梨香ちゃん私たちより若いしさ……」  すかさず他のママ友がフォローに入ったが、朱美(あけみ)は容赦なく自分の意見を通した。 「そうかな? 色が派手な上に肌も露出してるし……なんか、どっか男捕まえに行くみたいな格好に見えて……あっ、そうか。別れた原因って自分の浮気だっけ? それとも、旦那の浮気だったかな?」 「ちょっと、それは言い過ぎじゃ……」  恵梨香は聞こえないように舌打ちを打った後、そのママ友の集団に近寄って行った。 「お呼びですか? なんか名前が聞こえた気がしたんですけど?」  恵梨香はできる限りにこやかな表情を見せたが、朱美はブスッとした表情を変えずに恵梨香を睨みつけている。その重くるしい空気に耐えきれなかったのか、別のママ友が口を挟んできた。 「ほら、ニュースの話よ!」 「はい……?」  全く予期してない話題が飛んできて、恵梨香は少し困惑した。 「ほーら! 山で人の骨が出て来たって……」  あまりピンと来てない恵梨香に、ママ友は付け加えた。それを聞いて、恵梨香は今朝出発前に見たニュースのことをぼんやりと思い出していた。 「怖いわよねぇ~。ここの近くでしょ? うちね、上の子が小学生なんだけど、今日も集団下校!」 「まぁ、そうなるわよね~。あれ結局なんだったっけ? 殺人事件?」 「それは調査中とかじゃなかった?」  話題は一気に猟奇的な殺人事件にシフトしていった。恵梨香自身、その事件を具に把握しているわけではなったが、身近でこうも悲惨な事件が起きてしまうなんて、世の中物騒になったもんだとぼんやり感じていた。
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