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 刑事は病室の扉の前で立ち止まり、扉の向こうに行くべきか否かを再度考えた。  好奇心旺盛な彼女のことだ。色々と事件について聞いてくるに違いない。当事者である以上伝える義務はあると思っている。ただ、どこまで伝えるべきかは決めていない。決めずに扉の前まで来てしまったのだ。 ──どうしたもんか……  困り果てて頭を掻いていると、次の瞬間扉が開いて白衣の女性が現れた。 「どうぞ?」  彼女は困ったような表情を浮かべたが、すぐに道を開け刑事を促した。 「どうも……」  刑事が一礼すると、彼女も軽く会釈をしてふたりは入れ替わるように部屋を出入りした。  問題の人物はすぐそこにいた。部屋に入って右のベッド。わずかに空いたカーテンの隙間からその人物が確認できた。刑事はさっそく声をかけようとしたが、彼女の方が一歩早かった。 「あっ、刑事さん」  刑事は頭を下げ、ゆっくりとベッドに近付いた。そして、そばにあった椅子に腰かけるなりベッドで寝ている恵梨香に声をかけた。 「具合はどうですか?」  恵梨香は斜め上を見ながら少し考えた。 「まずまず……です」  来たのはあまり芳しい返事ではなかったが、その顔は笑っていた。 「そうですか……」  話を切り出したはいいものの、その後かける言葉も見つからず刑事はそのまま俯いた。 「ところで今日は何しに?」  すると、恵梨香が口を開く。刑事は顔を下げたまま目だけで恵梨香を見た。 「まさかお見舞いだけが目的ではないでしょ? 刑事さんだって忙しいのに」  恵梨香は白い歯を見せていた。どうやらお見通しらしい。刑事はそれを見てまた頭を掻いた。
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