TODAY

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 毎週月曜日、夜の22時に死んだの夫が帰ってくる。あの世からじゃない。ただいまと自宅に帰ってくる。そして丸めた背中に青ざめた顔をして私に言うのだ。 「ゆるさない…」 ****  私の人生はこんな冴えない中年男と結婚する予定じゃなかった。 美容師をしていた私は母親譲りの整った顔にモデルのような小さな顔、スラリと伸びた手足、街を歩けば誰もが私に振り返った。おまけに童顔だったこともあり、化粧次第で私の年齢は多いに化けた。身長は百五十六センチ。ヒールを履けば長身なモデルのようになり、スニーカーを履けばあどけない少女のように見えた。  だから、どんな男だって。私を欲しがった。  華やかな美容の世界に興味を持ち、自分の店を持つ夢もあった。二十歳(ハタチ)で上京して初めて勤めた美容院は男性スタッフのほとんどと関係を持ち、ドラブルとなり辞めた。  次の転職した美容院でも店長との不倫が奥さんにバレて店にまで来られたことがあった。姉妹店で同じ美容師だった奥さんがハサミを持って殴り込んでくるんだからあの時はゾッとしたけど、今では笑い話だ。  勤め先は三年続けばいい方だったが、東京はあちこちに店が出来ては潰れるから、転職するには苦労しなかった。顔だけだと思われたくはなかったので美容師としての腕は磨き続けた。誰よりも居残ってカットの練習をしたし、流行りのカラーリングやパーマの勉強もした。  接客のビジネス本も読み漁り、(関係をもった)男友達とキャバクラまで行って研究したりした。  その甲斐あって美容師として指名数も常に店のトップだった。客からの評判も上々だった。  そして私には美容師になってから心に決めた一つだけのマイルールがあった。それは、客には絶対に、手を出さないこと。関係を持たないこと。  もちろん声を掛けてくる男性客もいた。私の腕ではなく容姿に興味をもつ客も何人もいたがこれだけは絶対にやってはいけないことだと固く誓っていた。  そう、唯一自分との誓いを破ってしまったのは私の夫、立川和人(たちかわかずと)だけだった。  私は三十歳を超えていよいよ自分の店を持つことを視野に動き始めていた矢先、勤め先のオーナーに新店舗を任せられることになった。 店の内装すべて一から任せられることになり、夢が重なった。  
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