夏祭り

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夏祭り

「久しぶり! (あん)」 「久しぶり! (けん)」 「良かった、やっと会えた」 「うん、やっと会えたね」 「綺麗だよ、浴衣姿」 「ふふ、ありがとう」 謙は、サッと杏の腰に手を回し、2人並んで歩き出した。 「仕事忙しかったの?」 「うん、やっと落ち着いた」 「そっか、もう会えないのかと思ってた」 「ごめんな、寂しい思いをさせて」 「ううん。今日こうして、会えたから……」 時々見つめ合いながら、道の両側に並んでいる出店の列と列の間を通り、人にぶつからないように避けながら進む。 数メートル歩くと、船着き場がある。 「え? コレに乗るの?」 「うん、予約しておいた」 「すご〜い! 私、屋形船初めて」 「そっか良かった。特等席で花火を観よう」 「うん、嬉しい! ありがとう」 謙と杏は、30歳同士で高校の同級生。 お互い既婚者。 いわゆるW不倫だ。 どういう経緯で、こういう関係になったのかと言うと……
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