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一人の少年が夜の自然に佇んでいた。
身に纏う雰囲気はとても穏やかで優しげで、どこかあどけなさが残る細面の顔立ちは中性的な印象を受けた。
また、瞳は、まるで宝石のように輝くエメラルドグリーンだ。東北と九州の一部では、日本人の中で明るい色の瞳を持つ人が多いというが、少年は祖先にアングロサクソン系や欧州系の人が居たのかもしれない
少年・采女冬馬は、小学生最後の夏休みを利用して祖母の家に遊びに来ていた。
ある日の夜のこと。
寝付けなかった冬馬は外に出て星空を見上げていた。農道を歩き、小川の側までやってくる。
その時、ふいに後ろから肩を叩かれる。
驚いて振り向くとそこにいたのは、浴衣を着た18歳くらいの少女だった。月明かりに輝く黒い長髪に、整った顔立ち。どこか浮世離れした雰囲気のある少女は、まるで人形のように美しかった。小学生の冬馬から見れば大人に見えた。
少女は微笑みながら言う。
「こんばんは」
冬馬も遅れて挨拶する。
「こ、こんばんは……」
少女は微笑むと、言った。
「綺麗な星ね」
見上げると空に、満天の星が広がっていた。
二人はしばらく無言のまま、夜空に浮かぶ星々を眺める。見上げた先に、天の川があり、白鳥座、鷲座、琴座からなる夏の大三角が見えた。
「見かけない子ね」
「僕は、夏休みで来て。何となく散歩していただけです」
すると少女は羨ましいそうな色を見せた。
「良いわね」
「お姉さんは、こんな時間に何しているんですか?」
問に、少女は、どこか寂しげにした。
「花を、探しているの」
「花? こんな夜にですか?」
少女は静かに頷き、語り出した。
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