翌日・シナモンの香り

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ダリウスの行動を、先に予測することが重要なのだ。 未然に暴走や想定外行動を防ぐためには、 ダリウスの<人となり>や、習慣などを熟知していなければならない。 数時間後 ダリウスが駐車場の入り口に姿を表した。 今日は一人だった。 お持ち帰りはないのか・・・ リセは急いで車を移動させ、後部ドアを開けた。 「どうぞ・・」 ダリウスは何も言わず、乗り込んだ。 不機嫌そうに見える・・・ お持ち帰りがいなかったか・・失敗したか・・ いや、ダリウスなら女で失敗はないだろう。 リセは時折、 バックミラーで彼の姿を確認しながら、考えていた。 ダリウスは、窓の外をずっと物憂げに見ていた。 疲れているのか・・それとも・・別のなにか・・ 「シナモンの匂いがする・・」 ダリウスが唐突に言った。 リセは心臓が止まる思いで、 ハンドルを握る手に思わず力が入ったが、何とか平静を取り繕った。 待機中に、かじったクッキーの匂いが残っていたか・・・ リセの好きな物・・ それはシナモン入りのクッキーだ。 昨日はお持ち帰り女性の香水でまぎれたから、ばれなかったが・・ 「失礼いたしました。換気をいたします」 リセは窓を少し開けて、空気を入れようとした。 「いや・・かまわない」 ダリウスは窓の外を見ながら、そう答えた。
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