ファーストコンタクト

1/3
前へ
/47ページ
次へ

ファーストコンタクト

現世の有名ホテルの最上階、ペントハウスが指定された場所だった。 護衛官はドライバーも兼任する。 勤務時間はダリウスがこの場所のドアを開けてから、 最後のドアを閉めるまで続く。 指定された時間に、リセがドアの前に立つと、すぐに執事が開けてくれた。 リセは護衛官の制服、つまり 黒のジャケット・パンツに黒のネクタイで、 まったく男性と同じものを着用していた。 その姿はよけいに彼女の貧弱さを、際立たせてしまうように見える。 執事が一瞬、<大丈夫なのか?>という表情を見せたが、 すぐに声を発した。 「ダリウス様、護衛担当者がまいりましたが・・」 その声に、 リビングの先のベッドルームから声が響いた。 「こっちに来い・・」 執事がリセを見て指で方向を示し、一人で行くように無言で示した。 リセが指示された部屋に入った。 天蓋付きの大きなベッドが中央にある、豪華な部屋だった。 ベッドには上半身裸の男が、寝そべっている。 そして床には、リセの履歴書が散らばっていた。 「失礼します。今度担当させていただきます、リセと申します」 リセは扉の所で頭を下げた。 「こっちに来い」 再度指示が出たので、 リセは毛足の長い、歩くたびに埋もれてしまうような絨毯を進んだ。 ベッドの天蓋から垂れるカーテンの中にいる、 <1週間だけの主人>を見る事ができる位置まで進んだ。
/47ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加