第9章 ヴァンパイア族、現る

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ゆりね達はシャドーの導きにより、隠れ家の中で愛輝夢とゆりえを再会した後、悪魔教団の軍門に加わった天馬を救い出すための行動と作戦を考えていた。その時、隠れ家の中に誰かがいる気配を感じた愛輝夢は押し入れの方に近づく。 愛輝夢「そこにいるのは分かっている。さっさと出てこい」 ???「くっ、やっぱりバレていたか」 ???「だからあれ程申したではありませんか」 押し入れの中から聞こえるのは女が二人。一人は大人びた女性の声、もう一人は子供の声をした女の子だ。そして、観念したのか、その二人は押し入れのドアを開き、ゆっくりと現れる。 邪神ちゃん「あっ、お前ら!」 愛輝夢「やっぱり貴様らだったか・・・【ヴァンパイア族】」 アトレ「お久しぶりです、愛輝夢総帥殿」 押し入れの中から現れたのはヴァンパイア族と呼ばれる種族。大人びた女性は黒髪ロング、小さな子供は金髪ロングを特徴としていた。金髪ロングの少女の名はヴァンパイア族の姫【エキュート】。黒髪ロングの女性の名は【アトレ】。彼女はエキュートの補佐を努めている。愛輝夢はそんなヴァンパイア族が何故、シャドーの隠れ家の押し入れの中にいるのか聞く。 愛輝夢「なんで貴様等がここにいる? 目的はなんだ? まさか・・・またゆりねを・・・」 エキュートとアトレに対して睨む愛輝夢。それは無理もない。かつて、エキュート達ヴァンパイア族は悪魔を従え、天使達を手なづける超人並の能力やカリスマ性的な力を持つゆりねの噂を聞きつけ、彼女をヴァンパイア族の仲間として勧誘しようとしていた事があったからだ。ゆりねは魔界や天界からすれば警戒すべき恐れる相手であると同時に戦力として是が非でも仲間に迎え入れたいと言わしめる程の超有名人でもある。 エキュート「ち、違うぞ!? 妾達は断じてそんな・・・アトレ、説明してやってくれ!」 何故かアトレの方へ顔を向けるエキュート。自分達ヴァンパイア族がシャドーの隠れ家にいる理由を説明しようとするが、愛輝夢から向けられる鋭い眼光が怖くなり、代わりにアトレに説明をしてもらおうとしていたからだ。 アトレ「では、私の方から説明を・・・」 事情を説明しようとするアトレ。彼女の話によると、エキュート達がいつも通り東京内で献血を終え、献血センターの所でひと休みしようとすると、そこにはシャドーが現れ、ゆりえと天馬の通う学校の生徒の避難誘導員として協力を依頼しに来たからだという。 アトレ「そういう訳です」 シャドー「味方は多い方がいいのでな」 味方は常に多い方がいい。シャドーはそのために独自で動いていた事を話す。 愛輝夢「・・・理由は分かった・・・だが、これだけは言わせてもらう」 アトレとシャドーの説明に納得する愛輝夢だったが、同時に鋭い眼光を放ちながら威嚇するかの如く、エキュートとアトレを睨みつける。 愛輝夢「ゆりねとゆりえ、天馬に関しては・・・余計な事をしてくれるなよ?」 エキュート「お、お主、誰に向かってそのような口を!」 余計な事をするなと睨みつける愛輝夢。それはまるでエキュート達ヴァンパイア族を絶対敵視するかの如くの眼光と威公を放ち、【その気になればいつでも獲物を狩り取れる】と言う意志そのものだった。それを見たゆりねはエキュート達と愛輝夢の間に入る。 ゆりね「愛輝夢、駄目よ」 愛輝夢「・・・ゆりね・・・」 ゆりね「あなたの事情は分かる。でも今は争っている場合じゃないでしょ?」 何故、愛輝夢がここまでエキュート達ヴァンパイア族に対する敵意を持つのか、実を言うと、愛輝夢は過去、【ある事情】が原因で全てを奪われた事があったため、それ以来、ヴァンパイア族に対する【怒り】【憎悪】【敵意】と言う強い感情を持つようになったからだ。もちろん、ゆりねはそんな愛輝夢の事情を18年前から聞いているので理解はしている。 ゆりね「だから愛輝夢、今は彼女達と協力して・・・ね?」 ゆりねは天馬を助けるためにも、悪魔教団撲滅のためにも、味方は多い方がいい、そして、ヴァンパイア族と協力するように呼びかける。そして 愛輝夢「・・・・・・分かった、ゆりねが・・・望むなら・・・」 ゆりね「・・・ありがとう、愛輝夢・・・」 とりあえず、事態は何とか収まり、ホッとするゆりね。すると、ドアの方からもう一人の男が現れる。 ???「総帥殿、お師匠様、ただいま戻りました」 シャドー「ご苦労だったな。【翡翠(ひすい)】」 翡翠「あの、こちらの方々は?」 現れた男の名は【翡翠】。黒のポニーテールを特徴としており、年齢的にはゆりえや天馬と同い年と見て間違いない程の顔付きと体格だ。翡翠からすれば、ゆりね達は初めて会う客人でもある。シャドーはそんな翡翠に邪神ちゃん達悪魔やぺこら達天使の事を軽く紹介を終えると同時にゆりねの方に視線を向ける。 シャドー「そして、こちらが、主の奥方様だ」 ゆりね「初めまして、よろしくね」 翡翠「こ、こちらこそ、よろしくお願いします」 緊張しながらもゆりねに深くお辞儀をする翡翠。無理もない。翡翠からすれば、愛輝夢の妻であるゆりねは中学生っぽい幼顔と身長であるため、その姿で36歳である事に驚きを隠せないからだ。軽く自己紹介を終えた後、新しい情報が入ったらしく、翡翠は口を開く。 愛輝夢「翡翠、状況報告を頼む」 翡翠「はい、実は・・・」 翡翠の話だと【本日の夜、00時にアンダーグラウンドと人間界を繋ぐ扉を開き、アンダーグラウンドの中にいる悪魔や神、天使や人間を呼び寄せ、人間界、天界、魔界、冥界を蹂躙する】と言う校長の目的が明らかになったと言う報告だった。 ミノス「おいおい・・・そんな事になったら・・・」 ゆりね「・・・まずいわね」 4つの世界の蹂躙、それは人間界に人間、天界にいる神々と天使、魔界と冥界にいる悪魔達を支配。つまり、アンダーグラウンドの住人達はその行為を至高快楽として捉え、それを行う。ゆりね達はそれを許してしまえば、全ての世界は崩壊すると言う意味を予感していた。しかし、それでも愛輝夢は顔色1つ変える事ない。 愛輝夢「連中がその気なら、こちらも打って出る・・・当然、返り討ちにな」 ミノス「よし、じゃあ早速、やれるだけの事はしておかないとな」 相手が何であれ、教団であれ、天馬を救い出す決意を固める愛輝夢。ゆりね達はその準備を手伝い、夜に備える事にした。すると、その話を聞いたのか、ゆりえは再び目を覚ます。[newpage] ゆりえ「・・・私も・・・行かせて」 ゆりね「ゆりえ?」 ゆりえ「私にも戦わせて」 先程の会話を聞いたのか、起き上がると同時に自分も戦いに連れて行くようにゆりね達に頼むゆりえ。それは悪魔教団の仲間に加わってしまった天馬を助け出すため、そして、自分達や学校の生徒達を騙し、非道な行いをしていた校長に一泡吹かせる為である。 一同「・・・・・・」 ゆりえの頼みに黙ったままの無言状態になるゆりね達。それは無理もない。いくら天馬を助け出し、校長や教団に一泡吹かせる為とはいえ、ゆりえは人間、そして、ゆりねも邪神ちゃんに対する超人的な身体能力を持つ事を除けば普通の人間、【生きるか死ぬか】【常に死と隣り合わせ】とも言える危険な戦い。そのような場所へゆりえを連れて行く事に誰もが反対だからだ。ゆりねはゆりえの方ヘ振り向く。 ゆりね「・・・ゆりえ、これは遊びじゃないのよ?」 ゆりえ「分かってる・・・分かってる・・・戦いに出れば、自分がいつ死んでもおかしくない戦いになるんでしょ?」 ミノス「それが分かってるなら、ゆりえちゃん、ここで待っててくれないかな?」 邪神ちゃん「あとは私達に任せますの」 ゆりえを危険な戦いに行かせないようにするべく、大人しく隠れ家に待つように言うゆりね達だが、誰かに似たのか、ゆりえは一度決めた事は途中から投げ出す事が嫌いで、最後まで果たそうする性格。そう訴えるかの如く、ゆりえはすでに覚悟を決めていたかのような表情をしていた。そしてゆりえは父、愛輝夢の方へ顔を向ける。 ゆりえ「お父さん、シャドーから話を聞いたわ」 愛輝夢「・・・・・・」 ゆりえ「私に・・・教えて・・・戦うための力・・・」 ゆりね「ゆりえ・・・あなた、まさか・・・」 ゆりえの言葉に嫌な予感と渋めの表情を見せるゆりね。そしてそれは、ゆりえの次の言葉で現実となる。 ゆりえ「お父さん、私に教えて・・・戦うための力・・・・・・・・・【巫女の儀】を私に教えて」 【巫女の儀】と呼ばれる儀式を教えて欲しいと頼むゆりえ。【巫女の儀】とは? 果たして、愛輝夢達は天馬を取り戻し、校長と悪魔教団の野望を阻止できるのか?
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