第3章 夫と父親

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ゆりえや天馬は高校生、それも16歳になった今となっては父親の事についてはこれまで15年近くぐらかされ続けており、天馬は我慢の限界に来ていたため、今度こそはと聞く機会を伺っていた。 そして、ゆりねは口を開く。 ゆりね「そうね・・・あなた達のお父さんがどんな人かって言うと・・・強くて、優しくて、家族やみんなのためなら何だってする人よ」 天馬「じゃあ・・・今、何処で何をしてるんだ?」 ゆりね「みんなのため、世界中を旅して、色んな事をしてるから忙しくしてるの。だから、いつ帰ってくるかなんて事はお母さんにも分からないわ」 父親の事について分かりやすいように説明するゆりね。これでとりあえず解決かと思われたが、天馬は納得が行かなかったのか、不満な表情を露わにする 天馬「だったら、何で・・・何で13年以上も家に・・・俺達に顔を合わせないんだ!? 仕事で忙しいからって、こんなに会えないなんて事があるのか!?」 ゆりね「天馬、落ち着きなさい。あなたの言い分も分かるけど、お父さんだって、私達に会いたいって思ってるのよ?」 これまで抑えていた不満が爆発したかのように声を荒げる天馬。 自分の父親がみんなのために仕事をしている事は頭の中では分かっていても、本当に家族のためを思ってるなら、忙しくても毎日のように顔合わせくらいしてくれてもいいのに、何故、13年近くも会ってくれないんだ? そういった思いが天馬の心を幼い頃から少しずつ歪ませていた。 すると天馬はゆっくり立ち上がり、何処かへ行こうとする。 ゆりね「ちょっと、何処に行くつもり?」 天馬「母さんの知ってる人達に、親父の事を知ってる人達に話を聞いてくるんだよ。何か分かるかもしれないし」 そう言いながらドアを開けて外へ出る天馬。天馬が外に出た後を見送ったゆりねは少しため息をつきながらゆりえを見る。 ゆりね「はぁ・・・ゆりえ、悪いけど、天馬の様子を見てきてくれる?」 ゆりえ「えー? 私が? 何で私がそんな事をしなくちゃなんないの?」 ゆりね「そうね・・・じゃあ・・・」 しばらくすれば帰ってくるのは分かっていても、一人で何をしでかすか分からない上、自分が止めに行っても言う事を聞かない可能性があるのと、ゆりえが行けば必ず止まる事があるからだという。 するとゆりねはゆっくり立つと、ゆりえの隣に近寄り、コソッと話をするように声を低くする。 ゆりね「冷蔵庫にプリンが4個あるんだけど、その内の1つは邪神ちゃんの分のプリンもあげるわ」 ゆりえ「プ・・・プリン? プリンが1人2個で、残りのプリンはお母さんと天馬の分・・・」 天馬を止めるためのお小遣い代わりなのか、家族3人+邪神ちゃんが食べるプリンの内、邪神ちゃんのプリンを1個追加で食べていいというゆりね。 特にゆりえはゆりねと同じく甘い物が大好きなので、特にプリンは1番の好物なため、この手の取引きにはかなり弱いのだ。 そして ゆりえ「じゃあ、20分ちょっとで止めてくるから、お母さんは邪神ちゃん遊びでもしてて」 ゆりね「ん、気を付けていくのよ。それと、場合によっては【半殺し】程度でいいわ。もちろん、他の人に迷惑をかけたら駄目よ」 ゆりえ「はーい」 プリンという取引きを受け、天馬を止めにダッシュしに向かったゆりえ。 それを見送るゆりねの隣に邪神ちゃんが近づく。 邪神ちゃん「ゆりね、ゆりえに何の取引きをしたのですの?」 ゆりね「んー・・・さあ、何の取引きかしらね、ふふっ」 邪神ちゃん「うわ、笑ってる顔が怖いですの」 何の取引きをして天馬を止めに向かわせたのかを聞く邪神ちゃん。だが、ゆりねの顔は【まさにゲス】的な表情になっており、まさか自分のプリンを取引きにし、天馬を止めに行った事を知るよしもしない邪神ちゃんであった。
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