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「……」
体が……。
揚げる前の唐揚げみたいだ。赤黒く濡れて、臭いを放つまま粉をまぶされて。服がねっとりと重たい。
顔も、少女は自分ではわからないが、煤なのか土埃なのかわからないもので斑に汚れている。額も露わな輪郭に、生気の混ざった白い眼差しがあるのだから、どこか嘴で突いた亀裂にも似ていた。
だから、その青年は気づいたのかもしれない。
まだパリッしている消防団の半被。真っ青な顔で、吐き気を飲み込むように上を仰いだ時、
「……子供が生きてる!」
と指さして叫んだ。
揃いの半被を着た、もっと年配の男達が集まってくる。
少女の唇が震え、両腕が微かに動いた。
「あー! じっとして!」
「すぐ下ろしてやるからなぁ!」
「よくがんばったなぁ、よくがんばった……!」
航空機は、丸めて捨てられた紙の形をしていた。男達はそれに取り付き、金属片が手に突き刺さらないよう、転がる人の顔を踏みつけないよう近寄っていく。
少女は客席の最後列であった場所、跳ね上がる形で折れたその残骸に両足を挟まれ、胴体が浮き上がり、逆立ちの体勢だった。だらんと下がった両手が辛うじて座席に付くため、宙釣り状態にはならずに済んだ。
何本もの腕が少女に伸ばされた。
真っ先に腰の辺りに毛布が巻き付いた。骨の折れた両足を慎重に抜き取られる。
ようやく降りることができた。
照りつける日射、おかしな臭いのする森の中、白雪姫みたいに横たわったまま運ばれる。
いくつもの男の顔と腕が周りにあって、誰に一番体重を預けているのかも、誰に訊かれたのかもよくわからない。
「お嬢ちゃん、名前は?」
「名前は? 誰と乗ってたの?」
「名前、言える? あなたの名前」
どの顔にも焦点が定まらない。
それで少女は、最も正面にある青い空を見た。
熱く沈黙した丸い太陽。
それが轟音と風によって陰ったかと思うと、ヘリコプターが接近してきた。彼女は再び空飛ぶ物体に乗らなければならないらしい。
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