2.手の平返し

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2.手の平返し

 僕は高校入学とほぼ同時にこの三人にイジめられた。  Ryushin(りゅうしん)Kaisei(かいせい)がケンカした時に、それぞれからムシャクシャの発散に使われるという理不尽なきっかけをはっきり覚えてる。  それが日常的になって、いつしかLeiya(れいや)がブレーンとしてイジメに加わってきた。  暴力、かつあげ、恥辱。一通りのことはされた。本気で自殺を考えたこともある。  でも二年生になると、三人は手の平を返すように僕に媚びるようになった。  どうしても自分たちのバンドに入って欲しいと頭を下げた程だ。  理由は分かってる。  当然嫌だったけど気の小さい僕は断れなかった。だから逆にこれを今までのイジメの仕返しに利用しようと考えた。  あいつらの態度がどんなに変わろうと、僕は今までされたことを許すつもりはない。  組んだのは『King Gnu(キングヌー)』のコピーバンドで、誰も楽器できないし覚える気もないエアバンド。  そして今、誰もいない放課後の2年2組の教室でそのエアコピーバンドのバンド名を多数決で決めようとしてる。  僕の仕返し計画が成功したらきっと無駄になるけどね。  −で、僕は三人のマヌケなやりとりと、計画が成功した時を想像して込み上げてしまう笑いを堪えながら紙を引いた。  折られているので開こうとすると、その前にLeiyaが口を開いた。 「誰の案か分かっちゃいそうだから、案に対してコメントはしないように」  全員が納得するのを見届けて僕は折られた紙を開いた。
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