最恐の初対面

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 スクールバッグの中を漁って手鏡を見つけ出し、目の前に持ってくる。  映っているのは当然私だったけど、なんだか若い。高校生くらいの見た目だった。  予感が確信へと変わっていく。最後の確認のため、幸のそっくりさんに問いかけた。  「今って何年何月何日?」  「えっと……今は2014年の6月1日だよ」  ほら、と携帯を見せられた。言葉通り2014年6月1日と表示されていた。  間違いなく目の前の人物は薄井幸であり、私たちは高校1年生だ。  「じゃあ私はリビングにいるから……。何かあったら呼んでね」  「うん。ありがとう」  私があの後、「熱中症っぽいから帰る」と言うと、幸がこう切り出した。  「じゃあうちで少し休んでいって。悠ちゃんの家けっこう離れてるでしょ?」  私の実家と幸の家は徒歩20分くらい離れている。  幸がどうにも心配そうにするので、お言葉に甘えて幸の家の客間で、休ませてもらうことになった。  一人になった私は、バッグの中を確認する。教科書とノートが入っており、そのどれにも私の名前が書いてあった。1―4とも書いてあり、そういえば高1のとき4組だったな~、と懐かしい気持ちになる。  どうやら私は過去にいるらしい。ここは私がいた時代より8年前の世界だ。高校1年生の私の体に、24歳まで生きた私の精神が入り込んでいる。  タイムリープ作品を読んだことはあるが、自分が体験することになるとは。ちなみに夢の中でないことは確認済みだ。鏡を見た直後に、腕やら頬やらをつねってみて、ちゃんと痛かった。  何はともあれ私は生きてる。もう助からないと諦めていたので、この状況は嬉しい。  もしや神様が私に同情して、楽しかった時期に戻してくれたのではないか。
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