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あてもなくフラフラと彷徨う。
夜の匂いに夏の匂いが混じりあって、ボクが現実世界ではないどこか別の世界にいるように錯覚させられる。
否、錯覚ではない。
ここは、終わりの世界。
ボクがいるべき世界ではない。
ジメジメとした暑さが、汗で張り付く服が、僕をイライラさせると同時に焦らせていく。
ここはどこなのか、なんて思わない。
迷子になった、とも思わない。
だからボクは、馴染みのある風景を、1人闇に目を慣らして進んでいくのだ。
蝉が鳴いているのをもうずっと聞いていない。
どれほど聞いていないのか、いつから聞いていないのか、そんなことはどうだっていい。
ずっと辺りは静寂に包まれ、ボクはただ闇に呑まれていく。
ボクは何処まで行けば、あの夏の夜に戻れるのだろう。
あの、光の溢れる、花火の見える、人の溢れる、騒がしいあの夜にーー。
そんな、取り戻せない夜を探すための夜の旅。
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