ハレの舞台

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ハレの舞台

 翌週、少し離れたところにある、マックで待ち合わせた。 「おまたせ」  由佳は、ピンクのブラウスに、淡いグリーンのロングスカートで、ロマンチックなファッションにまとめてきた。  洋真はというと、白無地Tシャツに、黒パンツ。  ライトブルーの、7分袖カーディガンを羽織って、涼し気におしゃれ感をだした。 「あれ。  洋ちゃんって、おしゃれさんだったんだね」 「それ、ほめ言葉と受け取って、いいのかな」  2人は笑いあう。  ひとまず、ファッションは成功だった。  各々、ドリンクを買って、ナゲットをシェアする。 「こうして話すのも、久しぶりだね」 「ああ。  由佳ちゃんが、なにしてるか気になっていたんだけど」 「ふふ。  洋ちゃん、他に気になる女の子とか、いないの」 「いないなぁ。  由佳ちゃんは、かわいいから、男が放っておかないんじゃない」 「そうでもないのよ。  私、かわいいかしら」  微笑んで、少し黙った。 「ねえ。  夏祭り実行委員長って、大変でしょ」 「うん。  思った以上に忙しいね。  でも、自分がたくさんの人に支えられて、生きてきたことを実感してるよ」 「へえ。  私、夏祭りとか、子どもっぽいかな、と思ったんだけどさ。  洋ちゃんが、実行委員長やるって聞いて、違うなって思ったの」 「夏祭りは、普段あいさつするだけの大人たちが、一つになるイベントなんだ。  ハレの舞台って、そういう意味なんだって、わかったんだ」  由佳が、外の通りを眺めている。  国道を、大型トラックがたくさん走っていた。 「まだ、働いてる人がたくさんいるね」 「ぼくさ、働きづめに、働いて死んでいくのは、変だと思うんだ。  やりたいことは、仕事のことじゃないって、思うんだよ」  バスが、何台か通っていった。  自家用車も多い。  そして、バイク。  歩道を行き交う、自転車。 「そうだね。  洋ちゃんは、やりたいことあるの」 「うん。  なにか、人のためになることをしたいな」 「それで、夏祭りを」 「そうかもね。  自分ができることを、やってみたら、先が見えるんじゃないかなってね」  由佳と一緒にいると、自然に自分の内面を話すことができる。  気分が落ち着いて、心を整理できた。  そして、一緒に家まで帰った。
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