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第二十五章 どうしよう
「…さて、こんなに家を開けた理由を聞かせてもらってもよろしいですか?」
…麗奈の表情は笑っているはずなのに、私の感情は恐怖1色だった。…怒らせてはいけない人って、こういう人のことを言うんだなあって思いました。その後は、
「…てな感じで、大変だったのです!」
あったことを全て包み隠さず話した。…まあそう簡単に信じてくれる訳がなく、訳2時間にも及ぶお説教という災難が私を襲ったのだった。
「…もう懲り懲りだ。」
もう麗奈を怒らせるのはやめよう。そう心から思ったのであった。
「大丈夫?」
あ~、リゲルが天使に見える、…魔王なのに、
「んあ、大丈夫だよ、」
「そっか、なら良かった。」
それにしても、なんで綾がいたのだろうか、私の周りに居た人物だけがこの世界に来ている気がする…いや、もしかして、転生者はこの世界に沢山居て、その中で私の周りに居た人物がピックアップされて出会ったということなのだろうか、…こればっかりは考えてもしょうがない、
「…なんか凄いことになってたねー、綾は、」
リゲルがそんなことを言いながら、お茶を持って来てくれた。嬉しい。
「ありがとう」
「どういたしまして、…でさ、」
「俺らの周りに居た人物が強すぎるってこと?」
「…うん、まあ、そうなるよねって考えたらそうなんだけどね?…でも、」
そう一泊置いてから、リゲルは続けた。
「流石にこう沢山いるとさ?…偶然とは言いにくいよね。」
「…まあな、」
流石に偶然にしては重なりすぎている。…だが、
「もしかして、前世で有名だった「神隠し」の事件って、この現象のせいだったりするのか?」
そう、前世で私が死ぬ前に、「神隠し」という事件が多発していた。年齢が私たちの年代だったので、誘拐にしては年齢が高すぎるし、遭難にしてはおかしいといわれていた事件だ。
「…そうかもね、」
「てかさ、綾って俺と同じくらい強かったよな?」
「…うん、あくまでも、一対一の真剣勝負で、の話だけど、そうだね。」
そう、綾とは、前世で私と同じくらい強かった強者だ、二人とも木刀、倒れて10秒起き上がれなかったらその人の負け、というルールで戦ったのだが、大体の場合、引き分けだった。そもそも、私は“白虎雷鳴流”という剣術を学んでいたのに対し、綾は“白虎爆炎流”という剣術を学んでいた。
「同門だっけ?」
「そうだな、」
そう、名前の通り、私と綾は同門だ。先ず最初に基礎である“白虎”を習得し、その個性や太刀筋を見て、“白虎雷鳴流”や“白虎爆炎流”を学ばされる。私も綾も、己の流派ととても相性が良く、師匠によく褒められていた。
極めた、と言われるのは師匠に準ずるか、それ以上に技を極めた時だ。白虎雷鳴流などの白虎流は、基本的に実力主義で、別に弱いからといって切り捨てられはしないが、やはり強い方が優遇される傾向にある。なので、私は結構頑張って白虎雷鳴流の使い手としては上位に居られるほど強くなったつもりだが、まだまだ師匠に教りたい事はたくさんあった。…が、後悔してもしょうがない、前を向こう。…何の話だっけ、そうだ、綾についてだ。
「…ちょっと待って、私並みに強かった綾が竜になったんでしょ?」
「そうだね…って、え?ということは…」
「暴れだしたら…」
「止められないね、少なくとも、今の人類では、」
「…でも、勇者ならいけるんじゃ?」
「…少なくとも私の方が保有魔元素量が多いんだ、そこに目に見えない“技量”を足したとして、今の綾に勝てる訳がない。」
「…そっか、じゃあ」
「私達で、討伐しなきゃいけない、ってことだね、」
「…勝てる?」
「…正直言って、厳しい。」
「そんなに?」
「そもそもの“技量”が私と互角、そして体力はほぼ無限と思ってもいいと思う、」
「…」
あまりの絶望に、リゲルは黙ってしまった。…が、私は続ける。
「そして、今の綾は高火力の魔法が使えると思ってもいいと思うし、多分、私よりも保有魔元素量が多いと思うよ?」
「…勝てるの?それ、」
「勝てる勝てない以前に、倒す必要なんてないんだよ、」
「…?」
困惑しているリゲルを尻目に、私は続きを話す。
「交渉すればいいんだよ、綾が理性を保ってるならば、交渉は容易だし、理性を失っているのならば、私の“虚無空間”に引きずり込むことができるから、」
「あ、そういや“虚無空間”の発動条件と範囲とかって何?」
「言ってなかったっけ?“自分の周囲100m以内の物質で、条件は”理性を保っていないこと”だよ」
「ん~、チート!」
「え?そんな?」
「うん!チート!」
「そうなの?」
「控えめに言ってぶっ壊れ!」
…そんなにヤバイ能力だったのか、“虚無空間”って、
「あ、ちなみに、発動条件の““自分の周囲100m以内の物質”っていうのは、私が認識していれば何でもいいから、分子レベルまで吸収できるよ。」
「うん、それはラトモイ凄い!そしてチート!」
その後はリゲルのチートコールが少し続き、その後は作戦会議をした。
「…もし、理性を保ってて、ガチの戦闘になったら?」
「そのことは考えない!その時考える!」
だって有効策がないんだもん!しょうがないじゃん!…あ、
「麗奈~、いる?」
「いるけど…何?」
「スイーツって作れる?」
「…材料は?」
「こっちで手配すればいける?」
「…まあね、」
「なら良かった、今度作って」
「いいけど…何かに使うの?」
「ん~最終兵器」
「え?スイーツが最終兵器?」
「まあいいから、じゃあ砂糖とか手配しとくよ」
「は~い」
そう残して麗奈はその場から去っていった、
「じゃ、「綾どうしようか会議」これにて終了!」
もうこれ以上話しても何にもならなさそうなので、終わりにした。あ~、おなか減った!そう思いながら、問題解決を後回しにしたラトモイなのであった…
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