5人が本棚に入れています
本棚に追加
夜。
私は星を眺めに外に出ていた。
綺麗な星空は人間の感情に左右されずに輝き続けている。
「私もあんな風になりたい」
「どんなカリーナになりたいの?」
私の言葉の後、すぐに言葉が返ってきた。
それはロックのものだった。
ロックは芝の上に座っている私の横に座ると私の足に布をかけた。
「夜は冷えるよ」
ロックはそれだけ言うと私と同じように星空を見上げた。
ロックとこうして星空の下で話すのはもう何度目だろう。
二人きりで話すのはいつもここのような気がしてくる。
ロックには今までいろんな話を聞いた。
魔法石の色の話。
街の人々の話。
王都の話なんかも聞き入れて私に話してくれていた。
そして私が勤めていた店ももうすぐなくなるとつい先日教えてくれた。
ロックは何者なのか。
最初は気になって仕方がなかった。
でも今はまるで昔からの付き合いのように慣れ親しんでいる。
「カリーナ、この王都から見える星はごくわずかなのは知っているよね。王都から出て遥か東に進むと海というものがあるんだ。もちろんそこから王都は見えない。でも海に行くと星空が海の水面に反射して無数の星があるように見えるんだ。ここから見える星座と全く違う星座も見れるし、運が良ければ七色の魔法と呼ばれるものも見れる」
ロックはまるで物語の中のような話をした。
ここで見ているだけでは考えられない世界の話。
私はその世界に憧れを持った。
いつか外に出てみたいとさえ思う。
兄さんを一人にはできないから不可能な夢物語だけれど。
「俺はいつかカリーナをそこに連れて行きたい。こんなに狭い世界で窮屈な暮らしをしている君に自由をあげたいんだ」
ロックの瞳は真剣なものだった。
右から見える赤い瞳には空にかかった星が映る。
それでもその星を貫くような熱い視線だった。
「今は難しいけどね」
ふと、我に返ったようにロックは星から私に目線を移し苦笑いした。
今のロックの話はまるで未来を告げるような話だった。
それほど私に心を開いてくれている。
そんな風に受け取ってしまう。
だから聞かずにはいられなかった。
「ロックは、なぜこの街に来たの? どうして私のもとへ?」
ロックはしばらくの間、黙っていた。
星空を見つめながら遠い目をしていた。
「君を救いたい。それは変わらない事実だ。でも街に来たのは君が理由じゃない。人を探していたんだ。昔から一緒で、でもある日突然姿を消してしまった二人の人間を」
最初のコメントを投稿しよう!