Ⅲ View of despair

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兄さんの友人、ロイロックさんが来て一日。 生活はいつも通り料理は兄さんがして、その他の家事は三人で分け合っていた。 ロイロックさんが魔法使いだということはずっと気になっていたが、触れられたくないと思ってたらと考えて触れないでいた。 夕方になって兄さんが夕飯の材料を畑に取りに行くと、ロイロックさんと二人きりになる。 「あの、ロイロックさん」 「カリーナ、ロックでいいよ。ライメルもそう呼ぶからね」 「じゃあロック、どうして家に来たの?」 ロックは一瞬、私を見つめたけれどすぐに微笑みを見せて私のそばに来た。 「君を守るため」 意味がわからない私は固まってしまう。 守る? 何から? それを見透かしたかのようにロックは優しく手を握る。 「大丈夫。何も悪いことは起きないよ。それより」 ロックは私と座っている私となるべく同じ目線になるようにしゃがんだ。 オッドアイの目からは優しい光がこぼれるようだった。 「君は優しいね。僕が触れてほしくないようなところは気づいていても聞かない。それに僕をすぐに受け入れてくれた。感謝しているよ」 ゆっくりと心の中が整理されていく。 片付いていない問題は山積みなのに、自分の散らかった感情が次々に納まっていく。 大したことを話したわけじゃない。 でも彼の瞳と彼の声には私を落ち着かせる力がある。 魔法使いだからだろうか。 それともロックがそんな人物なのだろうか。 「カリーナ」 ロックはもう一度名前を呼ぶと、今度は真剣な顔つきをした。 兄の前でも見せないような顔で。 「君は君だ。優しいカリーナはカリーナしかいない。そしてそのカリーナを必要としている人間はいる。僕はその一人だ。忘れないでね」 最後にロックは笑った。 言葉の意味は分からない。 励まされたような気もする。 でもこの言葉は忘れたくないと思った。 記憶が抜け落ちる私、意識がなくなる私、孤独を感じる私。 そんな私に必要な言葉だった。 「よし、夕飯の準備をしようか。ライメルももうすぐ帰ってくる」 「うん。ありがとう」 自然と出た感謝の言葉。 ロックは聞き逃さず笑って頭を撫でた。
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