Ⅰ To the darkness

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次の日、私はいつも通りの道を歩いて勤める雑貨屋へ向かっていた。 だが、足は重い。 なぜなら今日は営業日じゃない。 今日はたった一人の人生を狂わせる日。 王都には規制がある。 収益と雇人が比例しない場合、雇人を解雇する決まりがあるのだ。 しかもその収益はかなりの高額で商売をするのには厳しい。 私が働く店はあと少し売り上げが足りず人がいらないという判断にされた。 だから今日はその解雇人を決める日。 解雇人はオーナーが決める。 そしてその基準はきっと美の基準。 「来たわよ」 ひそひそ声で話されるのももう慣れたはずだった。 それでも胸が痛むのはまだ私の容姿を捨てきれてないから。 「どうせあの子は解雇されないのよ」 そんな中で一人私ではなく自分を見てもぞもぞとする少女がいた。 彼女はまだ16で父は不在、母は病で自分が稼いでいた。 「どうしたんだい」 隣のふくよかな女が背中を叩いて活を入れる。 「大丈夫だい。あんたはまだ若いんだから。切られるのはあたしらのような婆どもだよ。本当はカリーナ・ミラフォードが切られればみんなが満足なんだけどね」 どうしてそこでまた私の名が出てくるのかとため息をつきたくなるがそこは抑える。 「カリーナ。昨日の星空見たかい。昨日の星空は君のように綺麗だったね」 テラが空気も読まずに私の肩を抱く。 私のその手をどけて店の奥に行こうとした。 その時、奥からオーナーが出てきて場の空気が凍る。 だるそうな姿は変わらず、これから一人解雇するとは思えないほどの態度だった。 王都から派遣された人間だけあって感情が欠けているのだ。 「えー本日、解雇するのはルカ・フランビット。以上」 ざわめきも何も起きなかった。 全員が事態を把握できなかったのだ。 なぜならルカ・フランビットはさっきの16の少女なのだから。 だんだんと騒ぎのように声が上がり、ルカは泣きわめいている。 私も混乱を隠せずその場に立ち尽くした。 オーナーは何事もないように店の奥、オーナー以外立ち入り禁止の区域に入ってしまっている。 ありえない。 こんなに若くて働く理由がある人間を解雇するなんて。 怒りで拳を作った時、私の名が聞えた。 「カリーナ・ミラフォードのせいよ……」 そう呟いたのはルカだった。 先ほどの涙の目から竜のような燃える赤い瞳に変わっている。 その時誰もが察したのだ。 「お前のせいで、お前のせいで! お前なんか消えてしまえば……!」 赤い瞳、頬に浮き出た血管。 我を忘れる怒号。 その拳が飛んでくる寸前に私の前を何かが遮った。 「我を忘れし呪いよ。今ここで怒りの魂と引き換えに汝の清らかな心を解き放て」
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