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その言葉が言い終わった瞬間、ルカは目を閉じてその場に座り込んだ。
私の前に立ちはだかっていた紫色の上着を着た少年は静かに腕をしまっている。
「……あの」
私が声をかけると一瞬こちらを向いたが、すぐに店の外へと出て行ってしまった。
でもこれだけは忘れなかった。
オレンジと赤のオッドアイを。
「ルカ! しっかり」
女たちはルカを起こそうと必死になっている。
そしてルカがうっすらと目を開けると安堵の声が漏れた。
そうこの王都で呪いが発生することは多々ある。
その中で彼女は竜の呪いという怒りにとらわれた呪いを授かってしまったのだ。
おそらく先ほどの少年が呪いを消したのだろう。
「私、何をして……」
「いいから体を休めな」
そう言われてルカは一人の女に連れられ家に帰っていった。
それを見守る暇もなく私の腰に痛みが走る。
振り返れば、布やバケツを持った女たちが私を睨んでいる。
「あんたさえこの店に来なければこんなことにはならなかった」
そう言って一人がバケツの水をかける。
そこから記憶が曖昧になるほど私は彼女たちの裁きを受けた。
もうどうなっているのかなんてどうでもいい。
そんな考えさえよぎるほどだった。
彼女たちの怒りが収まったのは王都の営業時間が過ぎた夕方だった。
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