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漫才がやりたくて上京したのに、タイヨウ興業は俺だけをピン芸人で残そうと持ち掛けてきた。
当時はそれなりに尖った気持ちも持っていたから、俺はすぐにそこを辞めて、手当たり次第に芸能事務所に飛び込みで売り込んだ。
そこで出会ったのが、中堅事務所のスカイアップの男爵社長と、たまたま居合わせたハッシー師匠だった。
即興で漫才を見せる俺たちに興味を示してくれたのはありがたかったが、
「ブラックダイナマイト?またけったいなコンビ名つけやがって……そうやな……こっちがスターでそっちがダスト。スターダストやええやろ!」
師匠の一声で俺たちのコンビ名が決まってしまった。
当時の古橋はひどいニキビ面で、クレーター状態だった。本人も気にしていたので俺は心配したのが、それは杞憂に終わり、快くダストを受け入れていた、ように思う。
そんな思い出がふっとよみがえってきた。
帰り道を辿り始めると、自分が急に老けてしまったように思えた。
きっとあの爺さんが俺の若さを吸い尽くしたのだろう。きっとそうに違いない。
恐ろしいじじいや。
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