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ふくよかな身体に料理上手な、面倒見の良い年上のお姉さんときたら、あまえない方が罪やとも思う。けど、そんな年下男は明日のことなんてろくに考えちゃいない。婚姻届けを目の前に突きつけられて、ようやく事実を認識する。そしてあほみたいに狼狽する。この俺みたいに。
『もうここまできたら、既成事実を作ってそのまま結婚まで持ち込むしかないわよ』
こはだのお母さんは冗談のつもりだったのかもしれない。せやけど、なんだか俺は傷ついた。トイレの個室の向こう側で。
ちゃんとした大人からしたら俺なんてガキのままかもしれない。せやけど、俺は俺なりにこはだのことも考えてきたつもりだった。ずっと面倒を見てきてもらった恩もあるし、それなりにプライドもある。
なにより、こはだ本人とだって、結婚に関して向き合って話したこともなど一度だってまだない。しかも既成事実って、なんやそれ。
きれいなお姉さんたちが吸い込まれるビルをめがけて小走りする。あそこのビルの6階に、ハッシー師匠御用達の個室高級焼肉店がある。
エレベーターが開くと同時に受付のお姉さんがにっこりと微笑む。
「あ、永瀬さん!師匠、いつものお席でお待ちかねですよ」
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