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プロローグ
「ごきげんよう。」
「あら、ごきげんよう。結子さん。」
時は大正9年。ここは華族令嬢達が通うミッション系の女学校。教室に登校してきたのは級の中心人物。結子であった。
机に鞄を置くと級友達の輪に加わる。
「ねえ、皆様、ドッペル・ゲンガーってご存知?」
「まあ、それは異国の王子様の名前?」
「うふふ、違うわ。お父様が今大学で研究されてるの。」
結子の父は帝都大学の教授であり、超常現象や怪奇現象の謎を研究している。
「それで何ですの?そのどっぺるなんとかって。」
「いやね。ドッペルゲンガーよ。自分と全く同じ姿をしたもう1人の自分よ。」
「つまり分身ってことかしら?」
「ええ、そんなところだわ。」
「それでそのもう1人の分身がどうかなさったの?」
「もしそのもう1人の自分と出会ってしまったらその人は死んでしまうんですって。」
「まあ怖い!!」
級友達は一斉に悲鳴をあげる。
しかし
「くだらないわ。」
そんな級友達の姿を見て一言言い放つと席を立つ少女が1人。
彼女は他の少女達の輪の中に入らず1人机で本を読んだり勉強してる。装いも周りは袴なのに彼女は西洋風のドレスで着ている。まるで鹿鳴館の舞踏会で着るような。
級友達の視線が教室を出ていく彼女を追う。
「何なのあの娘?いつも1人で。」
「あの娘。宮家の方と婚約が決まったんでしょ」
「それであの態度。私達のこと見下してるのかしら?」
「まあ、感じが悪いわ。」
教室中には先ほどのドレスの少女の悪口が飛びかう。
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