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数日前。
“それ”は突然やってきた。
皮肉なことにどんな嫌われ者にも同窓会に招待されるらしい。
クラスで嫌われていた俺にも同窓会の誘いがきた。
それは思い出すように。死神がそっと首筋を鎌で撫でるように、突然に。
『鴇鷺小学校同窓会の報せ』
自宅の郵便ポストに入っていた招待状の封筒を手に取り俺からは禍禍しい色合いの感情が芽生えた。
「なるほど」
時が経てば嫌われ者も在りし日の尊い仲間か。
馬鹿にしやがって。
招待状が届いて数日後、確認のためか同窓会参加の可否を問う電話がかかってきた。
電話をかけてきたのは当時クラスで学級委員をしていた女子生徒だった。
ハキハキと喋るやる気満々の声が仕事できるアピールに思えて当時から彼女のことは苦手だった。
こんなところでも仕切り屋を発揮してるとは恐れ入る。
「同窓会? ああ、参加させてもらうよ。楽しみにしてる」
俺の返答は予想外だったらしい。相手が驚きに上ずる声が受話器越しから聞こえた。
学級委員の誰にでも公平でしっかり者の彼女でも俺のような浮いた生徒が同窓会に参加するとは思わなかったのだろう。
失礼な話だ。
日時と時間を改めて説明する彼女の声に耳を傾け届いた報せを目でたどり詳細の齟齬がないか確認する。
でたらめなことを言ってないかの確認だ。
「うん、じゃあ、当日×××ホールの会場で……うん、」
電話でクラスメイトと話す俺の声は自分でも驚くほど穏やかなものだった。
誰も俺の内に秘めた狂気を知らないで。
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