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side A
もしもし、はい、え?
ああ、ああ!はい、うわ、はいはい!
うわー、うれしい。
まじで連絡くれると思わなかった。
いや、全然。
ごめん、驚いただけで超うれしい。
ていうか俺が先に連絡したんだし。
いや、まじで手紙だしてみて良かった。
もう俺のこととか忘れてるかなって思ってたしさ。
ほんと?まじで?
うれしいなー。そうだよな、三年間同じクラスだったもんな。
え?途中で転校したっけ?そうか。
まあいいじゃん、細かいことは。
いやでも、まさか本人から電話くれるなんて。
ぶっちゃけ、ふつうに無視されると思ってたし。
せいぜい担当者っていうの?出版社の人から返事くるくらいかなーって。
読んだ、読んだ。
すげえな、お前。
昔からよく本読んでたもんな。
そうだよ、いっつも本読んでばっかだから、俺らがよく外連れ出してやってたんじゃん。
うんうん、たしかにちょっと強引だったかも。
ふざけすぎたこともあったかな。
え、でもお前も笑ってたよね?
そうだよ、ノリだよ、ノリ。
まあ、まだ俺も子供だったし、お前も不器用だったし、中学生ってそんなもんじゃん?
でもそうでもしないとお前、まじでやばかったよ。存在感なさすぎてユーレイみたいだったじゃん。
先生にも言われてたんだよ、あいつ休み時間ひとりで寂しそうだから誘ってやれって。
お前の母ちゃんだって、いつも遊んでくれてありがとうねって言ってたし。
俺?俺は今はね、レンタカー会社の営業やってる。
知ってるだろ?駅前の。
え、知らないの?全然こっち帰ってきてない?
まじか、今度帰ってこいよ、みんな集めとくから。
うん、まだ付き合いあるよ。
みんな、すげー驚いてた。
正直あんま本読むタイプじゃないじゃん、俺たち。
でもさすがに映画化してたらさ、CMとかバンバン流れるからわかるよね、すげーって。
みんな俺んとこにあれアイツ?って聞いてきた。
めっちゃウケる。お前のこと、みんな急に自分が一番仲良かったとか言い出してさ。
いやいや、そこは俺だろって。
でもお前なんで本名でやってるの?
作家ってみんな芸名使うんじゃないの?
ペンネーム?ふーん、そういう呼び方なんだ。
で、何で本名?
はは、何それ。あいかわらず寂しがりじゃん。
うん。そうだな。
今度まじで帰ってこいよ。
でさ、悪いんだけどサインしてくんない?
俺、子供いてさ。お前のことも子供きっかけで知ったのよ。
子供が映画で主役やるアイドルのファンでさ。
で、俺もたまたま原作者の名前見て、ウソ!?って。
そうでなきゃ知らねーよ。
本読まないって言ったじゃん。
しかもミステリー?って、なんか謎解きのやつなんだろ、読まねぇって、そんなん。
子供?
いま中一。そうそう、俺らが出会った歳と一緒。
同じだよ、俺、実家の近くに家買ったもん。
自分の子が自分と同じ学校行くってなんかいいよな。
それでさ、お前のサインもいいんだけど、主役のサインももらえたりしない?
原作者だろ?頼むよ。
うん、まじか。ありがとう。
え?何それ。
うんうん、いつでもいいよ。
お前の都合がわかったら連絡して。
あ、ほんと?
じゃあやっぱお盆かな。
みんな集まりやすいだろうし。
うんうん、じゃあな。
ありがとな。うん。
あ、サイン、まじで頼むな。
うん。はーい。はいはい。
なに?コーヒー?お前コーヒー好きなの?
いやマジで、せっかくみんなで集まるんだから、ここはビールにしとけよ。
俺の行きつけの居酒屋予約しとくからさ。
うん、はい。
何?また何か難しいこと言ってる?
お前マジ変わんねえな。
はいはい、またなー。
サイン、忘れんなよー。
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