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side B
もしもし?
あ、俺だけど。
手紙くれたって、担当さんから連絡もらって。
うん、ほんと久しぶり。
いま大丈夫?ごめんな、いきなり。
いや、忘れるわけないじゃん。
まあ、転校以来会ってないけど、君のことを忘れたことはないよ。
手紙ありがとね。
俺の本、読んでくれたって書いてあったけど。
うん、三つ子の魂百までっていうのかな。本好きが高じて作家になっちゃったよ。
そうそう、教室で読書してると君らはいつもちょっかいかけてきたよね。
本奪って投げたりさ。そのままどっか隠しちゃったり。あれには本当に困ったよ。
だんだん隠すものもエスカレートして。
体操着をゴミ箱に入れたりとか。
笑ってた?そうかもな。
だってどうしようもないじゃん、それ以外。
それに君ら、プロレスごっこだって絡んできたり、変な動画撮って笑ったりもしてきたじゃん。
まあ、先生も親も俺がひとりで本を読んでるよりも、君らと一緒にいるのを見た方が安心できたみたいだけどね。
あの人たちはひどく単純だったから。
子供は天真爛漫であれ、みたいな。中学生にもなってそんなことありえないのに。
そういう人たちからしたら、俺みたいな根暗な子供が自分のテリトリーにいることが許せなかったんだろうとは思うよ。
君はどんな大人になったの?
そう、仕事してるんだ。
ごめん、帰ってないからそっちのこと全然知らない。
でもそうだな、正直、君や君の仲間のような人間がどんな奴になったかは興味ある。
映画のCMで俺のこと、知ったんだ?
うん、がんばってきた甲斐があるよ。
君らとは俺が転校して以来、連絡とる手段もなかったし。いや、やろうと思えばできたのかもだけど、なかなか気持ちが追いつかなくて。
でも今回はね、やっと決心がついた。
君からの手紙を見たとき、俺は確信したんだよ。やるべき時がきたんだって。
本名でやってたのもそのためだったんだ。
いつか君らに俺の名前が届くんじゃないかって。
ペンネームじゃわかんないだろ?
でも良かった。有名になったおかげで思惑通り、君から連絡をくれた。
うれしいよ、久しぶりにそっち行こうかな。
へえ、子供いるんだ。
まあ、俺らもいい歳だしな。そういうこともあるか。
なんだ、やっぱり俺の本、読んでないんじゃん。せっかく登場人物に君らの名前も使ったのに。
ミステリーはいいよ。
俺が書くのは中でもスプラッタ系だから、謎解きのためにいくらでも凄惨な事件が起きる。
誰がどうなるか、俺の指先ひとつで決められる。生も死も。どんな残酷な運命も俺の思い通りだ。まだ書いてないアイディアは無尽蔵にある。実は謎解きが介入しえない完全犯罪も思いついてるんだ。
ふーん、子供、中学生なんだ。
あの頃の俺らと一緒か。
どう?親になったら少しはあの頃と気持ちが変わったりする?俺のこと、本当にちゃんと覚えてる?
サインね。うん、頼めると思う。
それくらい安いもんだよ。
俺も、君から欲しいものあるし。
会ってからのお楽しみだね。
そっち行くの、ちょっと時間かかるかもしれないけどいいかな。いざ会うとなるといろいろ準備しないと。
まあ、なるべく急ぐけど。
俺も転校したあの日からずっと、いつかは君に会おうと思ってたから。
みんなも呼んでくれるの?
そう、じゃあ俺もとっておきの仕掛けを考えなきゃな。
うん、大人数なら大人数に合わせるよ。
楽しみだな。うん。
サインね、わかった。
俺はsignを用意するから、君は※coffinを用意するといい。
なんてね。
はい。うん。
またね、か。俺が君にこのセリフを言うことなんて金輪際ないと思ってたのにな。
いや、本当に会えるのが楽しみだよ。
うん、そうだな、またね。
さようなら。
※coffin……棺桶
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