桃色の侵略

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 それは突然、宇宙の(ことわり)を壊すかのように起こった。  全世界が桃色に侵略された。海、空、丘、あらゆるものが桃色に変化した。  建物、道、食べ物も桃色一色になった。部屋の窓、車の窓も桃色になって、みんな必死で窓を拭いた。航空機、電車は危険なので全て運休になった。  各国の首脳が元の色を取り戻す方法と桃色になった原因を究明するため世界会議を開いた。  桃色はゴシゴシ拭けば少し綺麗になるが、それ以外の解決策は見つからなかった。  そして原因は、孤島に聳える城に住まう女性ランスが桃色のステッキを振り回したということで発生したことがわかった。  全世界がランスの持っているステッキを奪い、世界を桃色化した責任を取ってもらおうと躍起になった。  その頃、小学生の千鶴(ちづる)は学校から帰り、冷蔵庫からパンケーキを取り出して、さあ食べようという時に、茶色のパンケーキがピカピカ光る桃色になって悲しんだ。  こんなのパンケーキじゃない、うえーん。  千鶴の悲しみはマリアナ海溝よりも深く、ランスに怒りの念をふつふつと抱いた。ゆるさない。絶対に許さないんだから!  世界から精鋭部隊が集められて、ランスの城を偵察することになった。世界を桃色にさせる能力を持っているなら、他にも能力があるかもしれないので、まずは偵察部隊を送り込んだ。様子見というわけだ。敵の状況が判明すれば実動部隊を送るという手筈になった。  偵察部隊から送られる映像をあらゆる国の高官や国民が固唾を呑んで見守った。ランスが画面に映り込んだ。全身が桃色の服装で、背が高く目鼻立ちが整っていた。その後、ランスの妖艶な顔が大きく映ると声が流れた。
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