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掃除に島へ戻ろうとしたとき、岸のクラブ倉庫の方からこちらへ向かってくるジェットスキーが見えた。
ウェットスーツのシルエットから女性だとわかった。
―― 誰?鍵はかけてあるし、あんなスキー預かってあったっけ?見たことないフェイスガードだし。
―― 違うクラブの人かな。
―― 冬で、女性で、ジェットスキーやる。年季が入ってる人か、若いなら相当の猛者(もさ)だな。プロが来る湾じゃないし。
ジェットスキーは遊ばれるように滑ってくる。
操縦は女性らしくしなやかだった。
海女小屋島へ安全祈願に行くんだろうなと、
邪魔せずにしばらくここで待とうと海に浮かんでいた。
すると、小島ではなくこちらへ向かってくる。
挨拶?
―― 速い。
もう、すぐ近くで、右手がすっと上がって、てのひらが振られ、
風と波と香水の匂いとともに、そのシルエットは彼の目の前に現われた。
フェイスガードを外して、くったくなく笑った。
「こんにちは。面とむかっては、はじめましてになるかな」
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