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よく遊んだ公園に面した、そのカフェに急いだ。
近道なので、周りの子供たちの目を気にしながらも、遊具のクジラの低いトンネルを通り抜けた。後ろから笑い声が聞こえてきた。
隅に植わったビワの木の濃い緑の葉々に縁どられて、カフェのガラス越しに
兄の姿が見えた。
いつものボーダーなのですぐにわかった。
・・・もう、三日も同じの着てるから、家帰ったらひっぺがそっと。
自然と出た笑顔が、沈んでいた気持ちを癒した。
兄の後輩の男の人が、兄に軽く手を振りながら、店から出てくるところだった。
また一緒にいたようだ。
気があって兄弟みたいに思えるらしい。
マスターの柔和な目とコクリの挨拶に迎えられた。
「待った?」
楽しそうにマスターと談笑していた兄は、こちらを向こうともせずに
「いや、全然、さっき」
vtuberのグッズが真ん中に置かれた丸テーブルの席に着いた。
その音に気付いて、兄はやっとこちらに視線を向けた。
「何にする、映画?」
「うーん、その人に訊いてみて」
と、キャラクターグッズを指さした。
兄は笑いながら
「オレの妹君は、何がみたいんですかね?」
キャラクターの頬の辺りを指で軽くはじいた。
「痛っい」
「ホラーにしちゃうぞ、前みたいに、途中でまいっちゃって、待合ソファでぐったり」
そのvtuberは私だった。
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