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遠心分離機のような機器の中に血を送り 分離された血小板を私の治療のために使うのだった。 2時間ほどの間にそれが数回繰り返される。 一旦機器の中に入って、血小板をとられ、体温もとられ 冷たくなった血液が、妹の体内に戻される。 妹は、戻された血が血管を通る時、冷たいっと、口に言葉の形をさせて 少し頭を上げ、ガラス越しの控え室に居る私を見て笑うのだった。 それが彼女の、いたたまれない気持ちで付き添っている私への精一杯のこころづかいであることに、いつも私は胸を締め付けられた。 マスターの趣味のジェットスキーの雑誌を見ていた。 冬山を背景にしたジェットスキーの写真が、雑誌を持つ私の指に冷たさを感じさせた。 その血小板が私の命だった。 そして、すべてがそこから始まった。 ふと見た。
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