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暑い夜だった。
日中は自分の体温ぐらいだった気温が、日が暮れて星が見え始め、日の名残も消え闇が空を満たしても、たいして下がらずにいる。おそらく4、5度は下がったのだろうが、むっとする湿度の高い空気は、腕や顔や首、服で隠れていない部分すべてをいやらしく包み込む。
相棒が隣でうめくように言った。
「早く宿を探そう」
そうしたいのはやまやまだが、我々にはもう一仕事残っていた。
横を向いて一睨みすると、小柄な男は冗談だと言うように首をすくめて見せる。
「わかってるよ」
そして小さくそう言うと、上着の内側に手を入れて、そこにある物を確認する。暑苦しい格好だ。けれどその物を隠すには、その上着が最適だった。
もう二時間もすれば日付が変わるだろう。
その前に仕事を終えなければならない。
楽しみはすべてその後だ。
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