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恐る恐る、声のする方を振り返る。
「湊、お前…。」
着崩れてもいない、涙でぐしゃぐしゃでもない、可愛くて仕方のない俺の恋人の姿がしっかりと俺の瞳に映っているはずなのに、ぐにゃりと歪んで見えるのはどうしてなのだろうか。
「煌太さん、何、泣いてるの…。」
そう言って俺に近づく湊に、俺は手を伸ばす。
「湊、お前、何時だと思ってんだよ。」
湊の頬に俺の手が触れる。
夢でも幻でもない、暖かい湊の体温を感じる。
「煌太さん、ごめん。遅れた。」
俺の頬に涙が一筋、流れ落ちる。
「湊、俺、お前が好きだ。これから先も、お前とだけ、ずっと花火が見たい。」
湊の華奢な身体をきつく抱きしめる。
もう2度と、この可愛い恋人を離さないように。
「俺だって、好きだよ。大好きだよ。当たり前じゃん。」
ドン、と花火の上がる音がして、俺たちの頭上に華やかな光りの束が拡がる。
「あ、花火だ。綺麗だ。」
「ああ、綺麗だな。」
花火を見上げるお前の方が何100倍も綺麗だってことは、ドラマの臭いセリフみたいで口が裂けても言えないけど、その綺麗で可愛い顔を今だけは俺に見せてほしいから。
「湊。」
振り向いたその唇に、触れるだけのキスを落とす。
驚きながらも綺麗に笑ったその顔を、俺は一生忘れることはないと誓った。
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