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「あと少しで、素敵なアクセサリーが出来上がりますね。次回の来店もお待ちしております。」
「はい、こちらこそよろしくお願いします。」
店を後にして、夕飯の食材を買って家に帰った俺は、全く気が付きもしていなかったんだ。
湊の、嫉妬の本当の意味を。
「ただいま〜。」
「おかえり、湊。ちょっと早いけど、夕飯もうできてるからいつでもいいぞ。」
「うん…。」
早上がりの日は遅くても16時半には帰ってくる湊が、今日は17時半になってようやく帰ってきて、いつもよりも様子がおかしいことに気がつく。
いつもなら、『ただいま!今日、誰かに会った?』って喰われるくらいの勢いで聞いてくるはずが、今日に限っては何も聞かない。
それどころか、『あ、今日のご飯、俺の好きなカレーだ!さすが、煌太さんだね!』っていうお褒めの言葉もないなんて、明らかに何かがおかしい。
ただ、湊も新社会人として働き始めて数ヶ月しか経っていないのだから、かつての俺と同じように社会の荒波にでも揉まれているのだろうか。
食事の席についても、何も言わずにただ黙々と好きなカレーライスを食べ続ける湊に、さすがの俺も心配になって声を掛ける。
「湊、どうした?なんか、元気ないみたいだな?」
「え?そんなこと、ないよ?」
そう言って俺と目を合わせないように、ひたすらカレーライスの器を見つめる湊が俺にも言えないようなことで悩んでいるのかと思うと、胸が苦しくなる。
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