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美女と捜しもの
「暗かったし、小さいあんたが倒れてるのまでは気づかなかったんだよね。ごめんごめん。でも、私は運が良かったよ。おかげで、これが戻ってきたんだから」
あまねは羽織った布にさらりと触れる。
本日は、纏う衣装も昔語りに出てくる女人のようで、一段と妖艶だ。
「おねーさんは、人の世にすっかり馴染んでたよね」
「仕方ないじゃない。これがないと、私も帰れなかったんだから。あんたと同じ」
絹織物は天に昇るための羽衣である。
昔、大きく清らかな河で水浴びをしていた時に、風に飛ばされ行方知れずになっていた。
つまり、あまねもまた人間ではない。正体は天女だった。だから、人形サイズの少年にも、初めから動じずにいられたわけだ。
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