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巡り合い
……あまねはしゃがみ込んで、子どもをつんつん突いてみる。
「ねぇ、ちょっと坊や。起きなさいな」
「ぐぅ……」
「こんな所でまずいでしょ。騒ぎになるわよ」
「むにゃむにゃ」
「肝の据わった子だわね」
だんだんと面倒になってきたあまねは、ふと辺りを見渡した。
(ちょうど誰もいないわねぇ)
そう確かめるや、試しに布を引っ張ってみる。
すると、少年ももれなくついてきた。強く掴んでいるようで、はぎ取ることは叶わない。
「何? 寝てたんじゃないわけ?」
驚いて子どもの顔を覗き込むと、やっぱり寝息を立てている。
ちょっとばかし腹が立つ。深呼吸をして気を落ちつけ、それからひとつ頷いた。
「仕方ない。日が暮れるからね。こんな所に放ったらかしておけないもんね」
れっきとした人助けだと言い訳しつつ、小さな体を布ごとひょいと抱き上げた。そして、二階の自宅まで子どもを連れて帰ったのだった。
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