交渉(一)

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交渉(一)

「その布、お姉さんにちょーだい」 「やだよ」 「え? あらやだ。断られた」  連れ帰った少年は、その後、わりあいすぐに目を覚ました。  見知らぬ家にきょとんとしていたが、経緯を話すとすぐに納得したようだ。さらに飲み物を振る舞えば、俄然くつろぎ始める。やはり剛胆な子だ。  そこで、あまねは頃合いをみて、布が欲しいと申し出たのだ。それはもう、きっぱり、はっきり、直球で。  ところが、すげなくノーと返されてしまう。  心底驚いて目を丸くしたあまねに、少年も同じくらいびっくりした表情になる。 「いやいや、おねーさん。なんで当たり前のように、もらえると思っちゃったの?」 「だって、保護してあげたのよ」 「それについては、ありがとう」 「ジュースも美味しかったでしょ?」 「それについても、ご馳走さま」 「だったら、お礼にそれをくれてもいいんじゃない?」 「ちょっと待ってよ。そこがいきなり過ぎるんだって。どっかのガキ大将みたいな発想だな」
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