交換と提案(一)

1/1
前へ
/12ページ
次へ

交換と提案(一)

 ふむふむと聞いていたあまねは、突然、あっと声を上げた。棚に置いていた物を手に取る。 「ねぇ、それってもしかして、こんな感じの……?」  一瞬、言葉をなくしたのは少年だ。あまねの持つ物を眺め回し、やがて力強く頷いた。 「そう! これ! 間違いない」 「偶然だね。昨日の夜、拾ったのよ。届け出る時間がなくて」  それは定番の車型とは違い、操縦席を囲む窓が全面クリアで、アニメに出てきそうな見た目をしている。まぁ、カテゴリー分けするならば乗り物なのだろう。玩具売り場にあれば人気かもしれない。  目を輝かせる少年だが、すぐに眉間にしわを寄せた。 「ちょっと壊れてる……」 「そうなのよ。あ、私じゃないからね」  慌てて否定すると、少年はすんなり信じてくれる。 「うん。むしろ、これくらいで済んで良かったよ……でも、直すまでは恐ろしくて、とても家に帰れないや」 「直せるの?」 「まぁね。ちょっと時間はかかるけど」
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加