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交換と提案(二)
得意げに応じた後、彼は、あまねに絹織物を差し出してきた。
「じゃあ、約束どおり、これはおねーさんに」
そう言った少年は、玩具のようなそれを担ぐと、よたよたした足取りで出ていこうとする。
「ちょっと待ちなさい。直すのに時間がかかるんでしょ? それまで居られる場所はあるの?」
直すまでは帰れない――まさか、壊したのはお宝級の代物で、だから帰りづらいのか。そんなふうに訝しんでも不思議はないが、あまねは疑問をもたなかった。
首を横に振る相手に、これも縁だと提案する。
「なら、ここにいなさいな。私もこの家を出るつもりなんだけど、明日、明後日ってわけにいかないし」
「いいの?」
「余所者同士、助け合わないとでしょ」
「ありがとう! おねーさん、イケメンだなぁ」
「美人って言ってよ」
「はいはい。そりゃあ、美人でしょうよ」
そんなやり取りがあって、少年はその後しばらく、居候をしつつ修理に没頭した。
あまねも時間をつくっては、ようやく戻ってきた絹織物を手入れする日々。
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